三重大学の学生たちが「データサイエンティスト育成プログラム」でエッジデバイスを使った実世界データの解析や演習に挑戦

2024年6月26日
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社

2023年7月~2024年3月にかけて、三重大学で開催された「データサイエンティスト育成プログラム」に、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(以下、SSS)のエッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS™」が活用されました。

実世界データの解析や演習を通じた課題解決をテーマにした本講座では、株式会社EBILAB(以下、EBILAB)がAITRIOSを活用したカメラの設置、データ取得、モデル作成やデータ解析などのサポートを実施し、学生たちにデータサイエンスの分野での深い理解と実践的なスキルを身につけていただきました。三重大学の学生、先生、EBILABにインタビューをさせていただきました。

<三重大学 大学院地域イノベーション学研究科 加藤 貴也 准教授>

三重大学 大学院地域イノベーション学研究科 加藤准教授

・「データサイエンティスト育成プログラム」の概要と狙いを教えてください 
三重大学は、データサイエンスの分野で活躍する未来のリーダーを育成するための実践的な教育プログラムを提供しており、本講座は令和5年度で5回目となります。名古屋⼤学をはじめとする4大学連携プログラムの一環として、三重大学大学院地域イノベーション学研究科が主体となり三重大学が独自に実施するものとなっています。 

三重大学の講座のポイントとしては、実世界のリアルなデータを取るところから始まり、そのデータを使った課題発見とその解決までを学生たちに一連の流れで考えてもらうことが狙いです。実社会においてプライバシー問題などリアルなデータをとることの大変さを体験し、自ら課題設定をしてその課題を解くためにデータをどう活かすかを考える力が重要になるため、学生には実践的なスキルを身に付けてもらいたいと考えていました。

・講座を実施して見えてきた課題を教えてください
今回の講座は参加した学生たちで課題設定を議論するところから始めたため、自由度を持たせた分、課題設定に時間がかかりました。また今回初めてSSSから提供されたエッジデバイス(AIカメラ)を大学内に設置し、リアルなデータを取る取り組みを行ったため、プライバシーへの配慮の課題など学内の調整に時間がかかりました。

EBILABのサポートをいただきながら、SSSのAITRIOSでは画像データがカメラの外に出ないことを説明し、調整してもらうことで、データ取得に向けたデバイスの設置作業にこぎつけることができました。次回は事前に関係者でカメラ情報など設置に関わる準備を進めておけるとスムーズに講座を進められると思います。

三重大学 学生3名
AITRIOS IMX500 visual sensor

<三重大学 学生3名>

・講座で実施したことを教えてください
大学構内や隣接している三重大学医学部附属病院などにおいてどのような課題がありそうかを関係者と意見交換し、現地視察による課題への理解を深めました。またエッジデバイス(AIカメラ)の設置条件なども考慮しながら、テーマと設置場所を絞っていきました。 幾つか候補があった中で最終的には2つのテーマに絞りました。
 1.三重大学医学部附属病院の病院駐車場の混雑状況見える化
 2.校内学食の待ち行列状況見える化

 1のテーマは駐車場全体が見えるように屋内にカメラを設置し、駐車場に止めてある車を車単体ではなく群として認識し、その群を捉えた面積和で時間当たりの混雑度として表現しました。フローとしてはAITRIOSを使って教師データの取得、AIモデルの作成、データ分析を実施しました。カメラで取得した画像が斜めになっていた部分もあり、ホモグラフィー変換で真上からの画像に座標変換して活用しました。
 2のテーマはプライバシーへの配慮の観点から、教師データは生のデータではなく公開されているデータセットを使ってAIモデルを作成しましたが、実際の撮影画像の特徴と乖離があったため、十分な精度が得られない結果となりました。

・講座を通して学んだことや大変だったことを教えてください
・実世界でのデータ取得にはプライバシーへの配慮の問題など考慮しなければならない点がたくさんあることがわかりました。AIモデルを作る前は公開データセットでもある程度精度が出ると思っていましたが、実際にやってみて精度が出なかったため、実データでの学習が重要だという気づきがありました。
・今回の講座の期間は半年くらいしかなかったので、時間が足りないと感じました。ある大きな問題の解決に至るためには数年単位でデータを蓄積し、解析するトライ&エラーの時間が必要だと感じました。カメラ1台で、ここまでできたことはとても感心したし、驚きがありました!

・この講座を知人におすすめしたいと思いますか
・ 未経験者でも参加できることがとても良かったです。AIを作ることはとても難しいと思っていたのですが、AITRIOSを活用しながら簡単にできて良かったです。
・この講座を受講したことで、今後社会に出てAIやIoTに関わる仕事に就いた時、スタートラインの障壁は低く感じられると思います。AIやIoTへの興味・関心は講座を受ける前よりも強くなったし、イメージがしやすくなりました。

・講座を通してのコメント
<三重大学 大学院地域イノベーション学研究科 加藤 貴也 准教授>
これまでの講座ではデータセットを学生に渡してAIを作ることはやってきましたが、今回はカメラ設置交渉から実データ取得までを行ったため、学生たちにとって非常に貴重な経験となりました。この先社会では技術の課題検証だけでなく、その技術を使って何ができるかという仮説構築力が求められます。学生たちにはまずはアイディアベースで仮説構築ができるよう意識してもらえると嬉しいです。

<EBILAB 小田島代表取締役CEO>

EBILAB 小田島代表取締役CEO

今回の講座の中でプライバシーへの配慮の問題に直面する体験ができたのは良かったと思います。ゴールに向かってどうアプローチするかはとても大事なことで、社会人になると創造力がなかなか出てこない時もあります。今回は、カメラ1つで駐車場の混雑状況を把握するのは難しかったと思いますが、非常にたくさんのアイディアと工夫が凝らされていて感心しました。

今回の講座ではEBILABのサポートを得て、三重大学の学生にAITRIOSを活用してカメラ設置からAIモデル作成までの一連の流れを体験いただきました。「AI開発は難しいのでは?」という懸念が体験前後で和らいだことを伺うことができました。今後もAITRIOSを通して学生の皆様にAIに興味を持つきっかけ作りをご提供できたらと思います。

※AITRIOS、およびそのロゴは、ソニーグループ株式会社またはその関連会社の登録商標または商標です。